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『ホリミヤ』レビュー|“ふつう”の中にある、特別な関係。心地よく刺さる等身大ラブストーリー

第1章|作品概要と基本情報(ボリュームアップ版)

『ホリミヤ』は、HEROによるWeb漫画『堀さんと宮村くん』を原作とし、
作画を萩原ダイスケが担当してリメイクされた漫画をもとに、2021年にアニメ化された青春群像ラブストーリーです。

作品タイトル「ホリミヤ」は、**堀(HorI)と宮村(MIYa)**の名前を組み合わせた略称であり、
物語の中心にいるふたりの関係性を象徴する、シンプルかつ印象的なタイトルとなっています。


📚 原作情報

  • 原作:HERO(『堀さんと宮村くん』/スクウェア・エニックス刊)
  • 作画:萩原ダイスケ
  • ジャンル:学園、恋愛、コメディ、青春、群像劇
  • 連載誌:月刊Gファンタジー(2011年〜2021年)

堀と宮村の“ふたつの顔”を軸に、恋愛、友情、進路、家族など、
さまざまな人間模様が描かれる全121話完結の大人気作品。
その完成度と人気から、アニメ化を心待ちにするファンの声が長年絶えなかった作品でもあります。


🎬 アニメ情報

  • アニメ制作:CloverWorks(『約束のネバーランド』『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』など)
  • 放送:第1期(2021年1月〜3月)全13話
        第2期『ホリミヤ -piece-』(2023年7月〜9月)全13話
  • キャスト:
     堀 京子:戸松遥
     宮村 伊澄:内山昂輝

アニメ第1期では原作の主要エピソードを中心にテンポよく再構成。
第2期『ホリミヤ -piece-』では、原作で描かれながらアニメ1期で描ききれなかった“日常の断片”にスポットを当て、
より深く、より繊細にキャラクターたちの魅力を描いています。


✨ 作品の特徴

本作の魅力は、「人は誰しも表と裏の顔を持っている」というテーマを、
決して否定せず、むしろ肯定する姿勢にあります。

堀さんは“優等生ヒロイン”でありながら、実は超現実的で家庭的。
宮村くんは“地味な陰キャ”に見えて、実はピアスだらけの意外性満載な男子。

そんなふたりが、“ありのままの自分”をさらけ出せる関係を築いていく姿は、
観ていて心地よく、どこか安心感すら与えてくれます。

また、彼らを取り巻く個性豊かなクラスメイトたちの青春模様も丁寧に描かれており、
“恋愛”だけではなく“人間関係のあたたかさ”や“少しの寂しさ”を含んだ、
群像劇としての完成度も非常に高い作品です。


「恋が始まる瞬間」ではなく、「心がつながっていく日々」。
『ホリミヤ』は、そんなやさしくて確かな関係性を描いた、現代青春アニメの名作です。

第2章|あらすじ(ネタバレなし・ボリュームアップ)

堀 京子(ほり きょうこ)は、明るくてしっかり者。
成績も優秀で、クラスの中心にいるような“完璧な優等生”。
けれど、それは学校での“表の顔”。

実は彼女は、母が仕事で多忙なため、家事全般を担い、
放課後は弟の世話と家のことに追われる“地味で庶民的”な一面を持つ女子高生。
制服姿からは想像できない、すっぴんでエプロン姿の“生活感あふれる堀さん”が、彼女のもう一つの素顔です。

そんな彼女の前に現れたのが、クラスでは目立たず、無口で地味な男子・宮村 伊澄(みやむら いずみ)
彼もまた、学校では前髪で顔を隠し、静かに過ごす陰キャのように見える存在でした。

しかしある日、ケガをした堀の弟・創太を偶然助けた宮村が、
自宅まで彼を送り届けたことをきっかけに、堀と宮村は“私生活”で出会うことに。

そこで堀が見た宮村は、
ピアスだらけの耳、タトゥーのような刺青、長袖をまくった腕——
学校とはまったく違う“本当の彼”でした。

それ以来、堀と宮村は、
お互いの“学校では見せない顔”を知る特別な関係に変わっていきます。


家庭的な一面を見せる堀、
外見と中身のギャップを隠す宮村。
ふたりは少しずつ、だけど確かに心を近づけていく。

ただの恋愛ではなく、
**「本音でいられる相手に出会うことの、かけがえのなさ」**を描いた物語。

“表の自分”と“裏の自分”。
そのどちらも、ありのまま受け入れてくれる誰かがいる——
それが、堀と宮村の関係なのです。

第3章|ギャップが生む、とびきりの親密さ

『ホリミヤ』を語る上で欠かせないのが、“ギャップ”の魅力
この作品では、「見た目」と「本当の自分」のズレこそが、物語の鍵となります。


◾ 堀京子のギャップ

学校では、明るくて成績優秀、クラスでも頼りにされる完璧女子。
けれど家では、ノーメイクでエプロンを巻き、弟の世話や買い出しに追われる、
いわゆる“家庭感”満載の生活を送っている。

その“素の姿”は、たしかに地味で、リアルで、でも驚くほど魅力的。
飾らず、気取らず、真面目に生きる彼女に、視聴者は自然と共感を抱きます。


◾ 宮村伊澄のギャップ

クラスでは“根暗”とすら言われるほど静かな男子。
しかし、私生活ではピアスだらけの耳に、長袖で隠したタトゥー風の模様、
料理も得意で、意外におしゃべり。まるで別人のような姿に堀は驚かされます。

けれど彼のその姿こそが、“本当の宮村”。
そのギャップは意外性ではなく、**「秘密を共有することの親密さ」**を強く感じさせてくれます。


この“互いの裏の顔”を知っているという関係は、
いわば他の誰にも踏み込めない“二人だけの距離感”を生み出しています。

ふたりは、自分を飾らずにいられる。
だからこそ、お互いに自然体で接することができ、そこに恋愛以上の安心感がある。


このギャップ描写は、「好きになる理由」を明確に描いているだけでなく、
視聴者に対しても「人の見た目や肩書きで判断してはいけない」という
静かなメッセージとしても機能しています。

見た目で決めつけてしまいがちな今の時代に、
『ホリミヤ』が示してくれるのは、
「本当の関係性は、“素の自分”を受け入れ合うことから始まる」ということ。


第4章|“恋”だけじゃない。仲間たちが描く群像青春劇

『ホリミヤ』が多くの人の心をつかんだ理由は、
単なる“ラブコメ”や“カップルもの”にとどまらない、
群像劇としての完成度の高さにあります。


◾ 恋愛と友情が交差する人間関係

堀と宮村の恋が軸にありながらも、本作は周囲のクラスメイトたちの物語も丁寧に描写しています。

たとえば——

  • 元気で友達想いな石川 透と、ちょっぴり素直になれない吉川 由紀の関係
  • 冷静で大人びた一面を見せる仙石先生の娘・仙石 莉乃と、宮村の幼馴染であり元不良の柳 明音
  • 独特の空気感を放つ河野 桜や、無口で存在感のある井浦 秀

彼ら一人ひとりに、悩みがあり、想いがあり、過去がある。
それぞれのストーリーが小さなエピソードとして描かれ、
教室という日常の中に、まるで“本物の青春”が息づいているように感じられるのです。


◾ 恋愛だけでは終わらない、“成長”の物語

本作が素晴らしいのは、登場人物たちが“恋愛の成就”で終わらないところ。
彼らは恋を通じて、あるいは友情や失恋、喧嘩や和解を通じて、
少しずつ自分自身と向き合い、成長していくのです。

たとえば、宮村は堀との関係を通して「他人と関わることの意味」を見つけ、
堀もまた、宮村という存在を通じて「誰かに弱さを見せることの大切さ」を知っていきます。

クラスのあの人の、何気ないひと言に救われたり。
何も言わずに隣にいてくれたことに泣きそうになったり。
そういう“誰もが経験したことのある青春の断片”が、この作品には詰まっています。


『ホリミヤ』は、“ふたりだけの物語”でありながら、
“みんなの物語”でもある。

青春って、決して一人では味わえない。
関わる人がいて、すれ違って、支え合って、
そうやって少しずつ、自分も他人も変わっていく——

そのリアルで温かいプロセスが、この作品の真骨頂です。

第5章|日常に寄り添う、アニメとしての美しさ

『ホリミヤ』は、キャラクターやストーリーの魅力だけでなく、
アニメ作品としての完成度の高さも、多くの視聴者を惹きつけた要因のひとつです。

CloverWorksによる映像美、繊細な演出、感情を支える音楽——
そのすべてが、“青春の空気感”そのものを丁寧に映し出しています。


◾ 色彩と背景がつくる“青春のやさしさ”

『ホリミヤ』の画面は、やわらかく、あたたかく、どこか懐かしい。
晴れた日の教室、夕暮れの坂道、文化祭の飾りつけ——
すべてのシーンが、「ああ、こんな景色あったな」と感じさせてくれる自然なトーンで彩られています。

特に、堀と宮村が交わす“何気ない会話”の背景は印象的。
あえて情報量を抑え、キャラの表情と声に集中できるように計算された構図が多く、
“空気の静けさ”すら感じるような演出が光ります。


◾ 作画と動きが描く“リアルな距離感”

本作はアクションやファンタジーとは無縁ですが、
だからこそ、何気ない仕草や視線の動きに、心が奪われます。

・ふと視線をそらす
・頬を膨らませる
・ぎこちなく手を振る

——こうした演出の積み重ねが、
キャラクターたちの“感情の揺らぎ”をリアルに伝えてくれるのです。

特別な演出を使わずとも、「ふたりの空間」に生まれる沈黙や間に、
ちゃんと意味と重みをもたせる作りが、非常に丁寧で上質です。


◾ 音楽と声優陣がもたらす“安心と余韻”

BGMは控えめでありながら、必要な場面では静かに感情を支えてくれます。
ピアノやアコースティックの優しい旋律が、青春の淡さと重なり、
1話ごとのラストに“余韻”をしっかり残してくれるのです。

そして、声優陣の演技も秀逸。
堀を演じる戸松遥さん、宮村を演じる内山昂輝さんは、どちらもキャラクターの温度感を絶妙に表現。
等身大の感情を、誇張せず丁寧に届けてくれることで、作品のリアリティを高めています。


“何気ない日々”にこそ、大切なことが詰まっている——
『ホリミヤ』は、その日常を美しく、優しく、等身大に描き出すことで、
誰かの記憶の中にそっと寄り添うようなアニメに仕上がっています。

第6章|まとめ:恋も友情も、自分らしくいられる場所で。

『ホリミヤ』は、恋愛や青春を描きながらも、それ以上に**「他人とどう関わるか」「本当の自分でいられるか」**という、
とても普遍的で、それでいて深いテーマをやさしく描いてくれた作品です。

堀と宮村の関係は、ただ“両想いになって終わり”ではなく、
互いの“裏の顔”を知って、ありのままを受け入れ合い、
少しずつ距離を縮めながら、**「この人と一緒にいると落ち着く」**という空気を育てていくものでした。


また、彼らの周囲にいるクラスメイトたちの群像劇も、
「青春=キラキラしたもの」という先入観を壊してくれます。

・すれ違い
・気まずさ
・気持ちの整理のつかない片想い
・いつまでも届かない言葉

そんな“うまくいかない気持ち”をも肯定し、
誰かの隣で笑えるようになるまでのプロセスを大切に描いてくれました。


そしてこの物語が素敵なのは、
誰かと一緒にいることで、自分も少しずつ変わっていける——
そんな“人間関係の成長”を描いているところです。

恋も、友情も、ほんの些細な一歩から始まり、
やがて、かけがえのない関係になっていく。

それは、“自分を偽らずにいられる場所”があることの、
何よりの証なのかもしれません。


✅ ギャップのあるキャラが好きな人
✅ ラブコメより“人間ドラマ”を楽しみたい人
✅ 派手じゃないけど心にしみる作品が好きな人

『ホリミヤ』は、そんなあなたにとって、
**“自分の心に素直になれる場所”**を思い出させてくれるアニメです。

等身大の感情を、ていねいに、愛情深く描いた青春群像劇——
それが、『ホリミヤ』という物語です。


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