第1章|“記憶喪失”が青春を動かす、異色のスタートライン
『忘却バッテリー』は、よくある高校野球アニメとはまったく異なる切り口から始まります。
物語の主人公は、かつて「怪物バッテリー」として全国の中学球界に名を轟かせた投手・清峰葉流火と捕手・要圭。
――しかし、舞台は高校入学の春。
葉流火は突如として**「野球に関する記憶を失っている」**という異常事態のまま物語が始まります。
🧠 ただの“記憶喪失設定”じゃない、その意味
よくあるご都合主義の展開かと思いきや、本作ではこの「記憶喪失」が物語の中核テーマとして重く、丁寧に描かれます。
- 葉流火の変化:
記憶喪失により、冷酷な“天才”から、明るく誰とでも仲良くなる“普通の少年”に。 - 周囲の反応:
かつて彼に打ち砕かれた元ライバルたちが「なんであいつがここに?」と戸惑いながらも、再び交錯していく。 - 要圭の葛藤:
唯一すべてを覚えている捕手・要圭が、葉流火の変化を受け止めながら、再び“野球”と向き合う様子が非常に繊細に描かれる。
⚾ “野球”がきっかけで再び繋がっていく人間模様
「スポーツを通じて青春を描く」という王道に乗りながらも、
『忘却バッテリー』はそれだけにとどまりません。
- 過去のトラウマを抱えたキャラ
- 野球を辞めたはずだった元ライバル
- 記憶を失っても変わらない“本能的な実力”
そういった複雑な要素が絡み合いながら、野球を通して再び心をつなげていく。
まさにこれは、“記憶”と“関係性”の再構築物語でもあります。
🎭 そしてテンポ感&ギャグのセンスも光る!
ここまでシリアスに語りましたが…実はこの作品、めちゃくちゃテンポがいい!
ギャグと真剣のバランスが絶妙で、重くなりすぎずにサクサク観られるのも魅力。
- 「野球部再建」ものとしてのワクワク感
- 高校生活のドタバタや青春のバカバカしさ
- シリアスシーンと笑いの切り替えの巧さ
この絶妙なトーンが、視聴者に“クセになる面白さ”を与えてくれます。
第2章|キャラクターが“過去”と向き合うとき、物語は走り出す
『忘却バッテリー』を語るうえで欠かせないのが、
記憶を失った投手・清峰葉流火と、記憶を持ち続ける捕手・要圭の関係性です。
そして、彼らを取り巻くライバルや新たな仲間たちの存在も、作品に深みを与えています。
🧢 清峰葉流火(きよみね はるか)|かつての“怪物”は、今や天然系のムードメーカー?
かつて「怪物バッテリー」の一角を担っていた、天才投手・清峰。
現在は記憶を失い、野球のことも仲間のことも忘れている。
しかし――
- 球速やコントロールなど、投手としての身体能力とセンスは健在
- 人当たりがよく、お調子者で天然キャラに見える
- 周囲に敵意を抱かせていた過去の彼を知る者にとっては「別人」と感じる
この“ギャップ”が最大の魅力であり、物語を動かす原動力でもあります。
🎯 要 圭(かなめ けい)|すべてを記憶する“捕手”が抱える苦悩
もう一人の主人公であり、葉流火とバッテリーを組む捕手。
- 記憶をなくす前の葉流火を知る唯一の人物
- 誰よりも冷静で、状況分析と戦略に長けたクール系
- しかし心の内では、変わってしまった相棒との関係に戸惑いと寂しさを抱えている
要の存在は、視聴者に“記憶”と“変化”をどう受け入れるかという問いを投げかけます。
👥 周囲のキャラも濃い!ライバルたちの「その後」
面白いのは、かつて葉流火に打ち砕かれた元・野球エリートたちが、
「何も知らず高校野球を始めようとする葉流火」と再会していく展開。
- 野球を諦めかけていた者
- トラウマから逃げていた者
- 自分を変えたくて挑戦を決めた者
彼らの過去と今が交差しながら、物語に厚みが出ていくのです。
⚾ キャラクター=“人生の選択肢”のメタファー
『忘却バッテリー』のキャラたちは、それぞれが過去に悩み、今を選んでいます。
- 忘れた者と、忘れられなかった者
- 野球に戻った者と、戻れなかった者
- 信じたい者と、裏切られたと思う者
この構造は、スポーツアニメという枠を超えて、人間ドラマとしての完成度を高めています。
第3章|圧巻の演出と音響が、感情を“プレイ”に乗せてくる
『忘却バッテリー』は、物語やキャラクターだけでなく、
映像・演出・音楽といったアニメとしてのクオリティも非常に高いのが特徴です。
🎥 作画|「野球アニメ」としてのリアリティと臨場感
バッティングやピッチングシーンでは、
細かな体重移動や視線、フォームのクセまで丁寧に描かれており、非常に“本格的”。
- 投手の“間合い”やバッターの“読み”
- 高校野球特有の泥臭さや汗の質感
- そして試合を通して描かれる心理戦
これらが画面からヒリヒリと伝わり、
野球経験者からも「リアル」と評されるほど。
🎧 音楽・効果音|打球音すら“ドラマ”になる
本作の音響演出は、とにかく細かく計算されています。
- バットに当たる音の強弱
- 観客のざわめき、シーンとした静寂の緩急
- 心の声が“無音”になる演出
特に印象的なのが、重要な場面で一瞬すべての音が消える演出。
「野球」という競技の緊張感を、画面の“静けさ”で表現するセンスが光ります。
🎙 声優陣|感情を直撃する演技力に注目
キャラの感情をリアルに届ける声優陣の演技も見逃せません。
- 清峰葉流火(CV:増田俊樹)
→ 天然・明るさ・内に秘めた闇までを器用に演じ分ける絶妙なバランス。 - 要圭(CV:宮野真守)
→ 冷静沈着で理詰めのキャラに、時折滲む感情の“揺らぎ”がさすがの表現力。 - その他、ライバルたちにも実力派が揃っており、演技のぶつかり合いが熱い。
🧩 “野球=勝負”を、感情の演出で超えていく
『忘却バッテリー』は、野球の勝ち負けよりも、
そこに至るまでのドラマや気持ちの動きを丁寧に描いています。
だからこそ――
- 試合をしていないシーンも面白い
- 勝ち負け以上に、キャラの成長に心が動く
- プレイの一瞬に、全話分の感情が詰まっている
こういった演出力の高さが、本作の“アニメ作品”としての完成度を引き上げているのです。
第4章|視聴者の心に刺さる、“あの日の悔しさ”と“今の希望”
『忘却バッテリー』は、ただの野球アニメではありません。
視聴者がこの作品に惹かれる理由――それは「過去の自分」との向き合い方にあるのです。
🧠 忘れたい過去 VS 忘れられない想い
本作は、「記憶喪失」を物語の起点としながら、
“忘れることで前に進めるのか”“忘れずにいるから強くなれるのか”というテーマを描いています。
- 葉流火のように、記憶を無くしても本質は変わらない人
- 要のように、すべてを覚えているからこそ葛藤する人
- そして、過去に囚われ続ける元ライバルたち
誰もが何かを抱えて、野球というフィールドで向き合っていく。
その姿は、スポーツを超えて「人生」そのものです。
😢 名シーンの余韻がすごい
SNSでも話題になった数々の印象的なシーン。
- 要圭が静かに言葉を噛み締める“感情の決壊”シーン
- 葉流火が「今の自分」として笑ってマウンドに立つ瞬間
- 試合の中で少しずつ“過去”と向き合う選手たちの姿
これらはセリフや演技だけでなく、演出・構成・間の取り方すべてが合わさって生まれる“心に残る名場面”です。
👥 視聴者の共感が爆発する「心の野球」
多くの視聴者が本作を見てこう言います。
「これは“自分”と向き合う物語だった」
「スポ根なのに泣けるし笑えるし、全部詰まってる」
「やっぱり青春アニメって、こういう“痛み”がないと面白くないよね」
「野球」をきっかけに、
忘れたいことも、後悔も、全部をひっくるめて前に進む彼らの姿は、
かつて“何かをあきらめた自分”や“うまくいかなかった青春”を持つ人の胸に響くのです。
第5章|記憶がなくても、心が覚えている──青春の“再起動”を描く名作
『忘却バッテリー』は、
「記憶をなくした天才投手」と「記憶を抱えた捕手」が、
再び野球に向き合う中で“心”と“青春”を取り戻していく物語。
⚾ スポーツ×記憶喪失という異色のテーマでありながら、
登場人物たちの感情の揺れや再生を丁寧に描いたこの作品は、
ただの“野球アニメ”では終わりません。
むしろ、野球という競技はあくまで「媒体」。
本当に描きたいのは、過去と現在、仲間と自分、期待と不安といった
誰もが経験する“人生の壁”をどう越えるか――その姿です。
✅ こんな人におすすめ!
- 💭 スポーツアニメは好きだけど、ドラマ性も重視したい人
- 💔 過去の失敗や後悔に共感できる人
- 🧠 記憶やアイデンティティにまつわる物語が好きな人
- 🎭 演出・声優の表現力にこだわりたい人
- 👥 青春の“群像劇”に胸を打たれたい人
🎤 編集部ひと言レビュー
「プレイで語る青春に、心を持っていかれた。」
「キャラが泣かなくても、視聴者が泣ける作品。」
「“天才バッテリー”に自分の過去を重ねて観てしまう。」
そんな声がSNSでも続出している、
今期きっての“感情特化型スポーツアニメ”といえるでしょう。
📌 総評
- ストーリー:★★★★☆(4.8)
- キャラクター:★★★★★(5.0)
- 演出・構成:★★★★☆(4.7)
- 作画・音響:★★★★☆(4.6)
- 共感度・没入感:★★★★★(5.0)
🎖 総合評価:4.8/5.0|“心を揺さぶるスポーツ青春譚”
第6章|この“青春”の行方はどこへ? 原作ファンが語る今後の展望
『忘却バッテリー』は、まだまだ「始まったばかり」の物語です。
現在放送中のアニメも、原作の初期エピソードにあたる部分をアニメ化しており、
ストーリーはここからさらに深く、重く、熱くなっていきます。
📚 原作はジャンプ+で連載中!
原作はみかわ絵子先生による同名漫画。
集英社のWEBコミック誌「ジャンプ+」にて大人気連載中で、現在20巻以上に到達(※2025年時点)。
アニメで描かれているのはまだ「序章」にすぎません。
- 清峰と要のバッテリーが真に復活する瞬間
- 過去のライバルたちとの再戦
- 新たに登場する“超高校級”の選手たち
- そして、記憶喪失の真相に迫る展開も…?
ここからのエモさ&熱さの爆発力は、今の比ではありません。
🎬 続編制作に期待!1クールで終わらせるのは惜しい!
SNSでも話題になっているのが…
「この作品、続編ないと勿体なさすぎる」
「むしろここからが本番では…?」
「アニメで“あのシーン”までやってくれ!」
というファンの声。
アニメ1期では、登場人物たちの内面や人間関係が丁寧に描かれ、
今後の対決や成長の“地ならし”が終わるまでが描かれる想定です。
そのため、2期・3期へと繋がっていくことで、
より多くの感動と衝撃を届けられることは間違いありません。
🧡 今、アニメで“忘却バッテリー”を知った人へ
もしこのレビューを読んで、初めて『忘却バッテリー』を知った方がいたら、
ぜひ言いたいです。
「今から観ても遅くない、むしろ今が最高の入り時」
「1話だけでも観て。きっと“心”に刺さるから」
そして、原作もぜひ読んでください。
アニメで気になった人間関係や背景の奥行きが、
漫画ではさらに強く深く描かれています。
第7章|スポーツアニメを超えて——“忘却バッテリー”が多くの人の心に響く理由
『忘却バッテリー』は、一見すると野球アニメ。
しかし、実際に視聴を進めていくとわかるのは――
この作品が「野球に興味がない人」にも圧倒的に支持されているという点です。
💡 その理由①:物語の核は“野球”ではなく“人間関係”
バッテリー(投手と捕手)の物語という構造を取りながらも、
本作が描いているのは、「心の距離」と「信頼の再構築」。
- 相手が変わってしまった時、関係をどう続けるか?
- 昔の自分を知る誰かと、どう向き合うべきか?
- 許せなかった過去を、どう“笑って受け入れる”か?
これらの問いは、視聴者の誰にとっても“自分ごと”として刺さるテーマです。
💡 その理由②:群像劇としての完成度が高い
要と葉流火の関係だけでなく、
周囲のキャラクターも1人ひとりが“物語”を背負っています。
- 野球を辞めたはずの天才
- あの時、自分がもっと頑張っていればと悔やむ補欠
- 野球部に入りたくなかったのに、なぜか巻き込まれた生徒
どのキャラも「ただのサブ」では終わらず、
ちゃんと1人の人生として描かれている。
この人物描写の多層構造が、作品を“群像劇”として高次元に成立させています。
💡 その理由③:青春の“ほろ苦さ”がある
『忘却バッテリー』が支持される最大の理由。
それは、「ただ熱いだけじゃない」からです。
- あの日の後悔
- 届かなかった気持ち
- 失った時間への想い
こうしたほろ苦い感情が随所にちりばめられ、
ただの爽やか青春物語では終わらせない深みを作り出しています。
📝 編集部コメント:これは“人生の縮図”だ
「野球という言語で語る、心の対話」
「変わってしまった誰かを、もう一度信じる勇気」
「誰かの本当の気持ちに、ようやく追いついた時のあの感情」
そういった、人生の一瞬一瞬を切り取ったようなシーンの連続。
それこそが、『忘却バッテリー』が野球ファン以外の心をも掴む理由です。
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3. 『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』レビュー
🌸 “過去”と向き合い、止まっていた青春が再び動き出す物語。
忘却や後悔、そして再会というテーマが『忘却バッテリー』と呼応。

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